2011年11月16日水曜日

【病状等説明】No.11

【経過】
急性骨髄性白血病、FLT3-ITD陽性の診断にて、JPLSGプロトコールに則り寛解導入療法を施行するも2コース終了後も寛解に至らず、プロトコールを離脱し、FLAG-IDA療法を施行。これにて腫瘍細胞の減少を認めたため、マイロターグを加えたFLAG-IDA+GO療法を施行したところ、初の寛解に至り、さらに深い寛解を得るため、もう1コースのFLAG-IDA+GO療法を施行し、臍帯血移植を予定していたが、血球回復を待つ間に、再発が確認された。
よって、非寛解移植となるため、臍帯血では移植後再発の可能性が高いと考えられ、強力なGVL(移植されたドナー細胞が白血病細胞を攻撃する作用)効果を期待し、母からの半合致(ハプロ)移植を施行することとした。多数例のDataは無いが、現状での長期生存率は10%~20%、合併症で死亡する可能性は20%~30%程度と推測される。

【骨髄移植とは】
患者の白血病細胞に侵された骨髄細胞を健康な骨髄に置き換える治療。
大量の抗がん剤や放射線照射による、強力な抗腫瘍効果とドナー細胞によるGVL効果により、白血病細胞を根絶させることが目的。
ドナーの骨髄から吸引した骨髄液を静脈内へ点滴で注入すると、注入された健康な骨髄細胞は前処置によって空になった患者の骨髄に生着し、造血を開始する。

【移植前処置】
(1)全身放射線照射(TBI:Total Body Irradiation)
1日2回に分割して3日間施行。痛みなどは全く無いが、動いてはいけないので、初回は念のため絶食にしておいて、鎮静をかける準備をしておく。
(2)エンドキサン
抗がん剤。点滴で大量(致死量)に投与する。
(3)サイモグロブリン(ATG)
ウサギから作った抗リンパ球グロブリン。発熱、悪寒、呼吸困難、悪心、嘔吐、下痢、頻脈、低血圧、高血圧、倦怠感、発疹、頭痛などの強い反応がでることがあるので、初日は極微量を試験投与してから本投与を開始する。GVHD予防のために使用。

【移植合併症など】
(1)嘔気、粘膜障害
口内炎だけでなく、消化器全体の粘膜障害のため下痢や腹痛も起こりうる。鎮痛剤や下痢止めなどで対応。内服が困難になったときには鼻から管を入れて、溶かした粉末薬を注入する。
(2)出血性膀胱炎
エンドキサンの副作用。ウロミテキサン(解毒剤)投与や大量輸液にて予防。ウイルスの再活性化にても発症することがあり。
(3)GVHD(移植片対宿主病:ドナー由来の細胞が、レシピエントを攻撃する反応)
皮疹、黄疸、下痢の三徴。ハプロ移植であるため、通常より予防的な免疫抑制剤を強化するが、致死的となる可能性となる。
(4)感染症
細菌、真菌、ウイルス再活性化。抗生剤、抗真菌剤、抗ヘルペス薬投与により予防。移植による免疫低下で普段は息を潜めているウイルスが再活性化し、重篤な症状が出うる。アデノウイルス、サイトメガロウイルス、帯状疱疹ウイルス、EBウイルスなど。EB-LPD(リンパ増殖性疾患)のリスクが高いので、自費にてウイルス検査をお願いしたい。
GVHDの治療(免疫抑制)と感染症の治療は相反するため、コントロール困難になることがあり、時に致死的となる。
(5)VOD(肝中心静脈閉鎖症)
黄疸、有痛性肝腫大、腹水、体重増加。TBI、進行期での移植、移植前のマイロターグ投与などが高リスク。重度な場合は致死率が高い。
(6)生着不全
4週間以上経っても生着の兆しが得られないこと。再移植が必要になることもある。この場合は臍帯血を使用。
(7)TMA(血栓性微小血管障害)
血便、溶血性貧血、血小板減少。重度の場合は致死率が高い。
(8)晩期障害
慢性GVHD、内分泌以上(不妊症、低身長、甲状腺機能障害、二次がんなど・・・等)

【今後の予定】
2011/11/19~11/23 前処置
2011/11/23 ドナー入院
2011/11/24 ドナー骨髄採取、移植
2011/11/26 ドナー退院

2 件のコメント:

  1. 初めまして。

    4歳の娘が8月からAML05 FLT3-ITDで入院しています。

    同様に妻からのハプロ移植を12月1日に予定しています。

    お互い良い結果となることを祈っています。

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  2. やまなかです。初めまして。
    コメント、ありがとうございました。

    ハプロ移植、とても厳しい道のりですが、ここまで頑張って乗り越えてこれたので、この次も乗り越えてくれると、信じています。

    お互い、よいご報告が出来ることを、願っております。

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